願いなんて、どれだけ望んだって叶うはずはない。




神様はいたとしても、善人じゃない。




みんなを幸せになんかにしてはくれないんだ・・・




願いや欲望




全ては自分で・・・自分の力で叶えるもの・・・




だけど・・・




















CARD -ray of right-



















道行く人の少ない平日の朝。

一人の少年が制服で登校していた。

その姿はまるで覇気がなく、何をしていても楽しくない。

そんな感じだった。

「(はぁ・・・今日もだりぃな・・・)」

彼の名は「一条 隼人」。

私立高校に通うごく普通の生徒である。

ただ、性格に難ありで、何をしていても無気力無関心で授業中も上の空。

成績が良く頭も切れるせいか、人に対して小馬鹿にするような物言いしか出来ないのである。

そんな彼はいつも通り、何気なく歩きながら、こんなことを考えていた。


「(でも・・・いつまでもこんな風に何もない退屈な日々が続く方が良いのかもな・・・)」


学校付近にさしかかり、人が増えてくる中、突然向こうから、長髪のきれいな顔立ちの美少年がやってきた。

というよりも、むしろ突然現れたようだった。

ふと、目が合ったような気がするが、彼の存在を気にもかけない隼人だった。

そして、その美少年とのすれ違いざま・・・


「お前もいずれ戦うことになる・・・『CARDを持つ者』として・・・」


彼が発した言葉に驚く隼人だった。

その言葉が何を意味しているのかは理解できなかったが、自分に対して言っていることが直感的に分かったからだ。

「えっ!?」

すれ違った少年を振り返ると、すでに彼の姿はそこにはなかった。

「(気のせいか?)」

思い悩んでいるうちに予鈴のチャイムが学校に響き渡る。

「やべ!」

そんなことはすっかり忘れ、今はただひたすら、学校に間に合うよう走っていく隼人だった・・・

なんとか遅刻は免れ、授業にはいつも通り参加することができた。

(といっても、いつも通り退屈そうな態度であったことには変わりない)






ー放課後ー






帰宅準備を始め、鞄に教科書類をつめている途中、一人の少女が隼人のところにやってきた。

彼女の名は「城島 香奈」。隼人の幼なじみである。

かわいらしく、まだ幼さの残る顔立ちで、おとなしい性格だ。

「はやくん。一緒に帰ろ」

彼女は隼人と一緒に帰る誘いに来たのだった。

誰に対しても面倒くさそうな態度で応対する彼だが、彼女に対してだけは少し違っていた。

「あぁ。そだな。じゃ、帰るか」

「うん」

2人は教室を出て、帰宅した。

この日の帰宅途中に起きた出来事が、隼人の運命を大きく変えるのだった・・・

「でね、真希ちゃんが・・・」

楽しそうに今日の出来事を隼人に話しながら歩く香奈。

隼人もまんざらではないといった表情で、彼女の話を聞きながら歩く。

「へぇ。じゃあさ・・・ん?」


・・・

会話は途切れ、何かに気づく隼人。

ふと、何かに気付く。

向こうで何かが起こっている。

なぜ、俺にそんなことが分るのか・・・

何が起こっているのかはわからないし、自分には関係ないことかもしれない。

でも、目線の先が気になって仕方がない。

その方向はいつも帰る途中に通る道から外れ、普段は行ったこともないような路地裏だった。

通りすぎ、香奈の家の付近まで帰って来た。

「(やっぱり気になるな・・・)

「悪い。先に帰っててくれ。」

突然の隼人の言葉に香奈は、

「え?どうしたの?」

「ちょっと忘れもんしたの思い出した。もうお前ん家までそう遠くないだろ?それにまだ日もそんなにくれてないし」

いつになく真剣な表情の隼人を見た香奈は納得し、

「わかった。じゃあ先に帰るね」

「あぁ」

そういって手を振って戻っていこうとする隼人に、

「はやくん!!」

「ん?」

「・・・ぁ・・・なんでもない。また明日ね!!」

すこし不安な表情を見せた香奈だったが、すぐにニコッと笑い、手を振替すのだった。

「ああ。また明日!!」

隼人は先ほどの気になった場所へと向かって走っていった。










路地裏にたどり着いた隼人。

しかし、何の気配も感じない。

殺伐とした風景があるだけだった。

「(気のせいだったのか・・・?でも、さっき感じたあれは・・・)」

さらに奥があったため、少し進んでみることにした。

そこに待ち受けていたものは、とんでもない光景だった。

「あ、あいつは!?」

長髪のきれいな顔立ちの美少年・・・

今朝出会った少年だった。

驚いたのは、彼がいたことだけではなかった。

なんと彼は、普通の拳銃とは大きく異なる独特のデザインの銃を構え、銃口の先にはぼろぼろに傷ついた同い年ほどの少年が倒れていた。

すぐさま倒れている少年の元へ駆け寄る隼人。

「おい!大丈夫か?おい!!」

少年は、瀕死の状態でしゃべる。

「気を・・つけ・・ろ・・・あいつは・・・普通じゃ・・ない・・・」

何がどうなっているのか、全然理解できない。

息絶える寸然の状態の少年は、隼人に・・・

「・・お前も・・・か・・・ならば・・・『CARDを持つ者』として・・・戦わ・・な・・ければならない・・・それが・・『運命』・・・」

「何だよそれ!俺が『CARDを持つ者』ってどういうことだよ!?」

そう言い残し、少年は息を引き取った。

「おい!おい!!」

何度呼びかけても少年は目覚めるはずはなかった。悟った隼人は、怒りをあらわに、

「・・・お前がやったのか!?」

問われた少年は答える。

「そいつは戦いに敗れ、自らの運命の末路をたどっただけだ・・・」

その瞳は冷たく恐ろしい目をしていた。

まるで悪魔に魅入られた人間のように・・・

しかし隼人は、

「ふざけるな!!・・・お前がやったんだな・・・なぜ殺した!?」

怒りでいっぱいであった。

隼人は人に死に非常に敏感で、特に人殺しを人一倍嫌っていた。

だからこそ、少年を殺したと思われる彼が許せなかった。


「『CARDを持つ者』として互いに『生命(いのち)』と『CARD』を賭けて戦ったまでだ。それに敗れた者には死あるのみだ」


冷静に答える少年。

「だから何だよ『CARD』って。なんでお前がこいつを殺すんだよ!?」

「そいつにも言っていただろう?お前も『CARDを持つ者』だと。秘めたる力が解放されたとき、お前も戦わなければならなくなる。」

現実味に欠けるその言葉の意味が、まだ今ひとつ理解できない隼人だった。

しかし、「戦わなければならなくなる」という言葉に納得できない。

隼人は、
「どんなことがあっても!!!・・・俺は誰とも戦うつもりはない!!!」

すぐさま冷静に言い返す少年。

「お前がその気でなくとも、いずれお前は戦わなければならない運命にある。その時がくれば、俺はお前を殺す。そして、お前の秘めたる『CARD』もいただく」

「何?!」

そんな時だった。

サイレンが少しずつどこからとも無く聞こえて来た。

その音はだんだん近づいてきていた。

「どうやら誰かが警察を呼んだようだな・・・」

「げ!ヤバい・・・」

慌てて逃げようと目を一瞬そらした次に目を戻すと、

「あれ?いない?おい!」

少年はいなくなっていた。辺りを見渡しながら叫ぶ隼人。しかしそこへ、

「俺の名は『命(みこと)』・・・そう遠くないうちにまた会うことになるだろう・・・」

少年の声が響き渡る。彼の名は「命」というらしい。

「く・・・とにかく俺も逃げないと・・・」

隼人も大急ぎでその場を去った。

サイレンの聞こえないところまで戻って来た。

しかし、気になることばかりで落ち着くことができない。

「(ちくしょう・・・何なんだよ一体!何がどうなってんだ・・・)」

怒りが収まらず・・・

「くそ!!」

壁を叩き付けるのだった。










「CARD」とはいったい何なのか?謎の少年「命」が言った言葉の意味とは?

今確実に何かが起ころうとしている。誰も知らないところで・・・

隼人の運命も、この日から少しずつ動き始めるのだった・・・