楽しい時間って、あっという間に過ぎるんだな。
香奈と一緒にいるときが一番・・・楽しい。
だけど、こんな瞬間<とき>がいつまでも続くはずなんてなかったんだ。
第四話
「決意 願い そしてここから」
「『スペードのA』さん」
その言葉を聞いた瞬間、隼人の脳内にはまたあのことが甦る。
「すぺーどのえーす?」
隣にいた香奈も当然それを聞いていたため、その「スペードのA」と言う単語が気になった。
「・・・いくらだ?」
隼人は立ち止まり、少年にたこ焼きの値段を聞く。少年もまた先ほどのひょうひょうとした表情に戻り、
「毎度!500円になりま〜す♪」
突然たこ焼きを買う隼人に少々驚く香奈。
「香奈、ちょっと行ったとこに公園があるだろ?先にあそこに行ってこれ食っててくれ。俺はちょっとコイツと話がある」
少年から買ったたこ焼きを香奈に預け、公園へ行くよう指示した。
香奈をこの場から少しでも離すためだった。
「・・・うん。わかった」
少し不安そうな顔をしていたがすぐに納得し、香奈は公園に向かった。
香奈が見えなくなると、隼人は少年の方を向き、話しかける。
「アンタ・・何者だ?」
その質問に少年は、
「俺か?俺は『ダイヤのA』、『角川輝一』っちゅうねん。よろしゅう」
少年の名は角川というらしい。右手でキザにポーズを決める。
「何なんだ。さっきからスペードとかダイヤとかって・・・」
「ああ・・・まだあんま目覚めてへんねんな。参ったなこら・・・」
困ったように頭をかく輝一。
「お前、『CARD』についてはどの辺まで知っとる?」
先ほどまでのひょうひょうと下態度とは違い、真剣な顔をする。
「やっぱりアンタも・・・一体なんなんだ!『CARD』って」
隼人が熱くなり、怒鳴るが、
「質問に答えろや。どの辺まで知っとるんや」
「う・・」
その威圧感と迫力に、隼人も少し押されてしまった。
「俺は・・既に一人・・・その時・・・これを・・・」
ポケットからは、この間の少女を殺した際に出現した一枚の札が出る。
「ほう・・・1枚は持っとるんか・・・ちゅうことは、一度は戦こうとるんやな。なら話は早い。それを集めるんや」
「集める?まさか・・また誰かを殺せってのか?!」
「ああ、そうや。そいつをそろえていけばお前は力を手に入れることが出来る。
そして、最後に全部集めた奴は・・何でも願いが叶う。それだけや。簡単やろ?」
質問には答えたが、隼人にはまだ疑問と蟠りが残る。そして、納得ができない。
なぜなら、この間の騒動も自らの意思でやった訳ではない。むしろ、やりたくはなかったが、抑えることができなかったからだ。
「断る。俺はもう誰とも戦うつもりはない。もう二度と・・・」
「何やお前、目的あって戦こうとるんとちゃうんか?」
隼人の不自然な対応に唖然となる輝一。
「目的・・そんなの・・・俺は誰とも戦いたくないし、誰も殺したくないんだ」
「ほう・・・さよか・・まあ、お前さんにどんな理由があろうと知ったこっちゃあらへんしな」
彼も誰かを殺しているのだろうか、だとしたらいったい何の為に?
輝一はそういうと、その後は何も言わず屋台の方へと戻って行く。
「おい、戦わないのか?アンタも・・・」
あえて引き止める隼人。ここまで話をしていたのに、何事もなかったかのように去って行く彼を不審に思ったのだ。
「まだ1枚しか持ってへんし、お前のその『CARD』やと勝っても得はあんまないしな。またお前が成長した時にでも相手したるわ」
「この『CARD』・・・あ、さっき俺を『スペードのA』って呼んだよな?アレは一体・・・」
隼人は先ほどそう呼ばれたことについて問う。
「お前さんの中にある『CARD』が俺には見えるねん。すごいやろ?」
「見えるって・・・俺の中にあるのは『スペードのA』ってことなのか・・・」
「まあ、見ることができる奴とできん奴がおるみたいやけど、たいていは自分と同じ『マーク』の奴を自分で見つけて戦うみたいやな」
そのまるでゲームをするかのような発言に怒りが込み上げた。
「おい!人の命なんだぞ。ゲームみたいに言うな!」
輝一も反論する。
「『死のゲーム』・・・俺らの間では『デス・ポーカー』ちゅうとるんや。目的の為に殺し合い、そして勝ち残る。それが宿命や」
「クッ・・」
必至に歯を食いしばりこらえる隼人。
「まあ、心配せんでも向こうからお前さんを狙ってくるやろう。そいつら殺(や)ればええんやから・・・」
その時、隼人は以前のようにじわじわと様子が変わる。
次の瞬間、紅蓮の炎が隼人を包み、その手にはまたあの剣が現れる。
覚醒したのだ。あの少女を殺したときのように・・・
すかさず跳び、後方へと下がる輝一。周囲には隼人から発せられる炎で覆われていた。身動きが取れない。
「おいおい・・コイツ・・・自分でコントロール出来へんのか?」
そういっている間もなく、隼人は雄叫びをあげながら剣を振りかざし、輝一に襲いかかる。
振り回される剣からは炎が舞い、振った後には火花が散る。輝一はただひたすらにそれをかわしていた。
「うあぁぁぁぁぁ!!!」
隼人は自我を失っていた。目の色には輝きもなく、冷たい物となっていた。
まるで、何かに取り付かれ、怒りの赴くままに動かされているかのようだった。
「(なるほど・・・戦う意思がない奴は無理矢理でも戦わせる仕組みになっとるっちゅうわけか・・・)」
心の中で何かを納得した輝一は、隼人が再度剣で襲いかかろうとしたその時・・・
「うおおおおおおお!!!!!!!」
「ったく・・・しゃあないな!!」
そういうと、輝一は両手を前に広げた。
そして次の瞬間、彼の手には巨大な長戦斧のような物が現れた。
隼人達同様、「CARDを持つ者」だけが手にすることができる武器である。
その巨大な長戦斧を構え、隼人が振り下ろした剣を受け止める。
「今のお前やと俺には勝てへんで!!」
押し返した。隼人はその勢いで大きく吹き飛ばされた。
「くっ・・・うわぁぁぁぁ!!」
後方にあったガードレールに叩き付けられた。
「うっ・・」
力の差がありすぎる。
前回の隼人なら一撃で相手をしとめていたが、今回は逆に押し返されたのである。
意識を取り戻すも、体中の痛みが隼人を襲う。その苦しさの中、隼人は、
「お・・俺はまた・・・」
『またやってしまった』と言いたかっただろう。
しかし、今回は殺すどころか、今は殺されるかもしれない。
すぐにそう感じた為に、言葉を失った。
「なめんなや。俺が負けるか!!」
倒れかかっている隼人に怒鳴りつける輝一。
「ええか、よう聞け。『CARD』を持っとる以上、戦いは避けれへんねや」
説教じみたその表情にはどこか説得力がある。
「おとなしく戦う気になれや。でないとお前・・・自らその身を滅ぼすことになるで・・・」
『自分が死ぬ』・・・今まで殺したくはないと思っていた。
しかし、殺されたくないと思ったことがあっただろうか。
なかっただろう。この「CARD」の件においても、自分が死ぬことよりも他の誰かが死ぬことの方が怖かったため、そんなことを考えもしなかった。
自分の力を少し過信していたのかもしれない。だが、
「お、俺は・・・」
「ハァ・・・お前が今暴走した理由。教えたろか?」
恐怖に震える隼人に、暴走した理由を話し始めた。
「『CARD』っちゅうもんはどうやら『戦う意思』がない奴は強制的に戦わせるもんみたいや。
つまり、お前がいつまでも戦うことを避けていれば、今のようなことがずっと続くっちゅうこっちゃ」
衝撃の発言に、隼人は愕然となる。確かに「戦いたくない」と常に考えている。つまり、今のようなピンチのときでも決して「戦う意思」はないのである。
これが今までの暴走の原因であると言うのだ。
「戦う・・・意思・・・」
理解は出来る。だが、自分の中にある「戦いたくない」という「信念」は、隼人の心を納得させることは出来ない。
「俺は・・・それでも俺は戦いたくない!」
主張する隼人に輝一は呆れ、溜息を漏らす。
「はあ・・さいでっか。ほならもう死んでもらおか」
そう言って、先ほどの長戦斧を大きく振りかぶり、倒れ込んでいる隼人へとその矛先を向ける。
絶体絶命のその時、輝一の後方から手裏剣のようなものが突然襲いかかる。
「おっと・・・」
体制を変え、瞬時にそれをかわす。
かわされた手裏剣は再び投げられてきたところへと戻って行く。
その先には、一人の少年が立っていた。
「ほう・・・俺でも気づけへんとは・・・うまいこと気配消しよったな・・・」
手裏剣を手にした少年が口を開く。
「バレたなら仕方ない。お前の『CARD』、この『三船』がいただく!!」
名乗ると同時に三船は高く跳び上がり、手裏剣を投げた。
高速で回転する手裏剣が輝一を襲う。
「ち・・・」
歯を食いしばり、再び迫る手裏剣をサイドにかわす。1つと思われた手裏剣だったが、三船は・・・
「甘い!!」
どこから取り出したのか、複数の手裏剣を一斉に輝一めがけて放った。
順序よく地面に横並びに突き刺さって行くのをうまくかわし続け、片足を曲げ、輝一は右手に長戦斧を持ち、左手を地面につきながら体を支えた状態に。
「くっ・・・一体どんだけ出てきよるねん・・・」
「我が武器『サーシュリケン』は意思次第で無数に召喚されるのだ!」
武器の説明をしながらも攻撃の手を緩めず投げ続ける。
次々と手裏剣が地面に突き刺さり、次第に追いつめられて行く。
「ハハハ!!単発式の武器しか持たないお前に勝ち目はない!!」
輝一の防戦一方に見えた。しかし・・・
「誰に勝ち目がないて?」
その一瞬の出来事に、蚊帳の外状態となっていた隼人も驚愕した。
なんと、いつのまにか輝一は三船の後方に立っていたのだ。
「な・・・いつのまに・・・」
驚く三船。すぐに輝一との距離を離そうとしたが・・・
「おらああ!!」
巨大な刃が振り回される。その爆風により、三船が大きく吹き飛ばされた。
「ぐわあああ!!」
かなりの距離を跳ばされたあげく、地面にすれながら前進して行く三船。
腰を抜かしていた隼人のすぐ側まで迫っていた。
「ったく・・・雑魚が・・・」
振り回された長戦斧の刃先は地面を向き、その周りはまだ風が吹き荒れていた。
「ああ・・あああ・・・」
鬼気迫る輝一の姿を目の当たりにし、あまりの恐怖に声も出せない隼人。
今までこんなに恐ろしいことを体験したことがあっただろうか・・・普通ならないだろう。隼人もそのはずだった。
「(何だよ・・・これ・・・こんな・・・)」
しかし、次の瞬間、彼の中の時間は止まる。
「(あれ?何だ?前にもこんな・・・)」
一瞬、脳裏には妙な光景が映る。
周囲に吹き荒れる爆風、散らばる瓦礫、辺り一面には誰もいない。
ただ一人目の前には誰かがいる。
一体誰なのか・・・
真上を見上げ、意味不明に笑っていた。
わからない。
知っている人間なのかどうかもわからない。
隼人の過去の記憶なのだろうか?
その光景の中にいる人物は、姿は鮮明に映るも、顔だけが映らない。
「・・・・はっ!」
我に返る隼人。
今一瞬映ったのは一体なんなのか、自分でもわからなかった。
ただ、今の光景と非常に酷似していたように思えた。
「(・・・前にもこんなことが・・・)」
しかし、はっきりと思い出せない。
その時、倒れていた三船が再び立ち上がる。
先ほどの攻撃により、服も体もボロボロになり、かなりのダメージを受けていた。
見ているだけで痛々しい状態だった。
たった1回の攻撃で、こうも傷を負わせることが出来るものなのだろうか・・・
その圧倒的な力が、輝一の存在をより大きく見せた。
傷つきながらも意識を取り戻し、再び立ち上がる三船だったが、先ほどの自信満々の表情は一変し、恐怖と絶望に満ちた表情になっていた。
「こ、こんなことが・・・」
右手が挙がらないのか、下に右腕をたらし、左で支えるような状態でその場によれよれの状態で立つ三船。
もはや彼には明らかに勝ち目はなかった。
その時だった。彼のターゲットは輝一から突然・・・
「なら、そこの男を先に倒し、力を手に入れてやる!!」
倒れていた隼人へと変わった。
やられる・・・初めてその矛先が自分に向けられた瞬間だった。
三船は手裏剣を両手に召喚し、短剣代わりに構え、隼人に向けて飛びかかる。
普通なら怯え、絶望し、その場で叫ぶものだが、隼人は叫ぶこともわめくこともなく、ただその場に絶句しながらも、あきらめた表情で座ったままだった。
「(死ぬのか・・・俺は・・・)」
隼人の中に暗闇が迫る。恐怖と絶望を味わい、死を覚悟したかのようになっていた。
「(まあ・・いいか・・・どうせ俺が死ねばもう・・・)」
諦め、そして悟ってしまう隼人。
しかし、一瞬だけふと彼女のことが頭に浮かんだ。
何も知らぬその笑顔がこちらを向いていた。香奈だ・・・
「(香奈・・・)」
彼女のことを思い出すと、隼人は・・・
「(俺が死んだら・・・あいつは・・・)」
悲しむに違いない。
残された者の悲しみが彼女を襲うのは明白である。
隼人の中で何かが変わり始める。
「(残された者の悲しみ・・・俺は・・・)」
連続して数々の光景が隼人の心に映し出される。
誰も知ることのない、いや、本人さえも封じ込んでいた忘れていた過去の映像。
それは先ほどの光景や、ほとんど忘れてしまい、顔すらも思い出せない両親の悲惨な光景。
幼き頃、墓地の前に一人笑顔を失った暗い表情でたたずむ自分の姿など・・・
彼は失っていた悲しい過去を少しずつ思い出したのだ。
そして、それと同時に、自分が今ここで死んでしまったら、香奈は・・・残された彼女がどうなるのか。
そう考え始めた。
「(俺は・・・死ねない・・・)」
心の中の紅蓮の炎が燃えたぎる。
消えかけた灯火が再び息を吹き返すかのように、隼人の心もまた、生気を取り戻す。
「(生きる為に・・・生き残る為に・・・!!)」
三船の手がすぐ側にまで近づいたその瞬間、辺りは炎に包まれた。
覚醒した時と同じかと思われたが、今までとはどこかが違う。
怒りがあふれ、まるで血のように赤々とした紅蓮は、まるで太陽から放たれているかのような明るく輝かしいオレンジ色に変わっていた。
炎が隼人を守る。
「何だと?!うわああ!!」
三船はその炎と爆風に吹き飛ばされる。
再び地面にえぐられるように叩き付けられる三船。
もはや立つのもままならないほどの傷を負っていた。
「な、お前は一体・・・」
何が起きたのか理解出来ない三船。
輝一からターゲットを変え、確実に勝てると思っていた相手だっただけに、そのショックは隠しきれない。
炎の中からは、あの剣を構える隼人の姿があった。その瞳は輝かしく、希望に満ちていた。
「俺は・・・生きる為に戦う。それが、俺の・・・『戦い』だ!!」
暴走ではない、真の覚醒を果たしたのだ。
『生きる為に戦う』
それが彼の戦う理由である。戦う意志を持った今、彼は自分の意志で行動出来る。
「何が生きるだ!!お前は今ここで死ぬんだよぉおお!!」
一本の糸が切れた。怒り狂った三船が再び炎の奥にいる隼人へと向かい、襲いかかる。
手裏剣を前方に交差させながら両腕に構え、隼人に切り掛かる。
「死ねえええええ!!!」
その勢いは凄まじいものだった。辺り一帯に燃え盛る炎を蹴散らす。
しかし、その勢いは全く持って無意味だった。
短剣代わりに向けられた2つの手裏剣は、隼人の構える剣に止められる。
「く・・・うおおおお!!」
予想以上の力に動揺を隠しきれない三船は、本能の赴くままにただひたすら押そうとする。
しかし、隼人の力の前には、それも全く無駄だった。
「俺は負けない。生きるんだ、アイツを悲しませない為にも!!」
隼人の力が、三船を押し返す。ぶつかりあう2人の武器が火花を散らし、金属音が響く。
こすれあう刃と刃。一度2人は離れる。
体制を再び立て直し、両者とも構える。
「く・・・こいつも強い・・・だけど・・・今更あとには引けない!!」
最後の力を振り絞り、三船は飛びかかる。
隼人も剣を構え、迎え撃つ。
その際に、脳内には知るはずもない1つのワードが浮かぶ。
しかし、構うことなくそれを口に出す。
「赤き炎の聖剣・・・クリムゾンスペーダー!!」
隼人の持つ剣が変形し始めた。
剣の一部がサイドに開き、中から拡張された剣先の部分が延長される。
クリムゾンスペーダーと呼ばれたその剣をいくつかの火玉が周回し、熱気を放っていた。
「くらええええ!!!」
三船の攻撃が隼人を襲う。
それに対し、クリムゾンスペーダーが立ち向かう。
互いの刃が再びぶつかり合い、多大な衝撃と光を放つ。
そして、その瞬間、炎は爆風となり、2人を覆う。舞い上がる煙により辺りは何も見えなくなる。
一部始終を見ていた輝一がやっと声を上げる。
「お、おい!」
彼にもどうなったのか全く理解出来なかった。
煙が落ち着き、徐々に中の様子が見えてきた。
向かい立つ2つのシルエット。互いの武器をぶつけあい、その場で硬直していた。
どちらが勝ったのか。しばらくすると・・・
ドサッ!
片方が前方に倒れた。そのシルエットの手には一本の剣が握られていた。
そう、勝ったのは隼人だ。
「ハ、ハハ・・・勝ちよったアイツ」
煙が完全に消え、剣を構えたままの隼人の姿が鮮明になった。
その真下には三船が倒れていた。
「はぁ・・はぁ・・・やった・・のか?」
息を切らし、剣をおろした。
そこへ輝一が駆け寄る。
「全く・・・人のこと無視しよってからに。やれば出来るやないか」
先ほどまでの恐ろしい表情は見る影もなく、最初にあった時と同じ表情に戻っていた。
「良かったな。これでお前の能力が上がるで。コイツは・・・」
そういって、隼人の肩に手を置き、グッドサインをする輝一。
その時、三船からはあの少女と同じように光が溢れ出す。
そして、消えて行くと同時に1枚の札が現れた。
「スペードの3」
記されていたのはトランプでいうところのそれだった。
長方形の札には先ほど三船が使用していた武器と、隼人と同じような炎のような模様の枠が描かれていた。
右上から対象的に描かれた2つのスペードマークと「3」の数字。
これが「CARD」である。
「スペード・・・」
現れた「CARD」を手にし、その「スペード」の文字に目がいった。
「そう。そいつはお前と同じ『マーク』の『CARD』や」
「同じ『マーク』・・・」
隼人は戦いに勝利し、生き残ったのだ。
そしてこの「CARD」がその証である。
「でも・・・俺・・・」
とは言ったものの、やはり後悔の念が残る隼人。
そんな顔を見た輝一は、
「そいつの思いはお前の中で生き続けるんや・・『CARD』として・・・」
どこか悲しく空しい。
そんな表情で言う。
「俺の中で・・・」
次の瞬間、隼人はあることを思いつく。
「そうか!俺が勝ち残って倒されていった奴らを生き返らせれば良いんだ!」
隼人が思い立ったのは、散っていった者達を自分の願いで蘇らせるというものであった。
単純明快だが、生きることを人一倍望む彼らしい願いである。
それを聞いた輝一もやれやれといった顔をし、
「まあ、それもよしとちゃうか?」
「だろ?」
やっと、隼人にも笑顔が戻った。
今ここに、新たな決意をする隼人だった・・・
全てが丸く収まった次の瞬間、
「あんな・・・」
突然呆れたように輝一が・・・
「さっきは客やと思うとったけどなあ・・・」
「ん?」
「俺はお前んとこの学校の1個先輩やぞ?少しは口の聞き方に気ぃつけんかい!」
どこから取り出したのかと突っ込みを入れたくなる(むしろ入れているのは輝一だが)ように、どこからともなくはりせんを出し、隼人を頭から叩く。
「いって〜〜・・・って、何い?!うちの生徒なのか?」
最後の最後で驚きの事実。
なんと、輝一は隼人達の通う学校の生徒でひと学年上の先輩だったのである。
「せや。てなわけで、よろしゅうな!」
「何がよろしくだ・・・」
対照的に笑顔な輝一とため息顔の隼人であった・・・
一方、公園へと向かった香奈は・・・
「遅いなぁ・・はやくん・・・」
夕暮れは静かに去って行き、1日が終わっていくのだった。