どうすれば許されるんだ?後悔しても戻らない生命。取り返しのつかない罪。

仕方がなかった・・・

俺は自分を抑えるような心の強さなんてなかった・・・

いや、俺の心のどこかで戦うことを、アイツを殺すことを望んでいたのかもしれない。

これからもこんな事が続くことを考えると恐ろしい・・・

考えていてもだめだ。今は・・・






















第三話
「つかの間の休息」





















週末の日曜日・・・

幼なじみの「城島 香奈」と共に、新しく本日オープンしたテーマパーク「ヴェネーツィアパーク」へとやってきた隼人。

いつになくしゃれた服装で決めていた。

「ここが新しいテーマパークねえ・・・」

愛らしい服装の香奈を横に、その規模の大きさに驚きいていた。

ここは「水の都」として知られるイタリアの「ヴェネツィア」を再現し、独自のキャラクター等を展開しているテーマパークである。

園内の門に立っていた2人。入り口は、その前にもかかわらず、信じられないほど大きく広かった。

初日で、話題になっていたとなれば観客数がどれほど多いか予想はついていた。

予想は見事にあたり、混雑する・・・と、思われていた。

しかし、あまりにも広い為、どれだけたくさんの客が集まっていたとしても、あまり気になるほどの数には感じられなかった。

「ねえねえ。早く行こ♪私ゴンドラに乗ってみたい」

「はいはい。お嬢様」

はしゃぐ香奈に引かれながら、微笑しながら冗談を言う。

仲良く2人はチケットを買い、テーマパーク内へと入って行った。

そんな2人を遠くから何者かが見ていた・・・

「ほほう・・・今日はついとるの〜」

関西弁でしゃべる少年だった。

どうやら隼人と香奈を見ていたらしいが、何がついているのか。

不適な笑みを浮かべるが、状況に似合わず、屋台を引く姿がどこか笑えた。











「着いた着いた。ここが『ヴェネーツィアパーク』ね。なんか、雑誌に載ってたのより大きいような・・・」

隼人達が入ってから間もなく、美咲と芽依もこの「ヴェネーツィアパーク」にやってきたのだった。

「でもやっぱりすごい人だよ・・・」

不安げに芽依に話しかける美咲。

「これだけ広いんだもん。大丈夫だって。さ、行こう」

美咲の手を強引に引き、彼女達も中へと入って行く・・・

「お?あの嬢ちゃんもか・・・ホンマについとるわ。よっしゃ・・・」

またしても先ほどの少年。美咲達に対しても同じ感想だった。

一体、彼は何ものなのか。

そして、その目的は一体・・・彼は屋台を引き、園内に入ろうとしたが・・・

「ちょっと君!駄目だよ。勝手にそんなので入っちゃ」

警備員に止められた。当然の結果である。

「え?ちょ・・うそ〜ん!」

すぐに駆けつけた2人の警備員に捕まり、連れて行かれた。













園内に入った隼人達。

その目の前にはまさに「ヴェネツィア」の景色そのものがあった。

見渡せばキャラクターの着ぐるみが歩いていたり、屋店をだしてポップコーンや食べ物を売っていたりと、よくあるテーマパークと何ら変わらなかった。

ただ、ヴェネツィアを再現しているだけあり、道と道の間には水路が通っており、そこを細長いカヌーのようなてこぎボート「ゴンドラ」が通っている。

香奈はどうやらこの「ゴンドラ」に乗りたいらしい。

止まっているところを見つければ、後は観光バスのように、この園内を案内しながらゆったりとゴンドラを満喫するのである。

「どっから乗るんだ?」

「ねえ、アレじゃないかな?」

香奈の指差す向こうに見えるのは確かに専用の乗り場だ。

少々人が並んではいたが、たいした数でもなかったので、2人は専用乗り場へと向かった。

徐々に人が前に進み、2人が乗る番まで来た。

乗り場に止まるゴンドラには専属の運転士が乗船し、お客様が乗るのを待っていた。

乗り場から案内人の指示に従い、隼人と香奈はゴンドラに乗った。

ゆっくりとオールをこぎ、ゴンドラが出る。

静かで緩やかだが、何か不思議な感じがした。

初めての体験に、驚きと関心でいっぱいの2人に対し、運転士がこぎつつ話し始める。

「本日は、当『ヴェネーツィアパーク・ゴンドラ』をご利用いただき、誠にありがとうございます。これから1時間ほど、おつきあいください。まず右手に見えますは・・・」

2人はゴンドラに乗りながら、ゆっくりとテーマパークを楽しむのだった。










一方、美咲と芽依は・・・

「だあ〜〜!!なんでこんなに広いのよ!!」

ガイドを見つつも2人はどこにいるのかわからなくなっていた。

つまりは迷子だ。

「やっぱり案内の紙もらった方が良かったじゃ〜ん。芽依が『何も見ないで行く方がロマンがある』なんていうから〜・・・」

案内の紙をあえて取ろうとせず、何も見ずに回ろうと提案したのは芽依のようだ。

反対した美咲だったが、彼女の強気な態度に仕方なく同意した結果、迷ってしまったのだ。

「だって・・・あ、あっちに行けば案内の紙があるんじゃない?」

芽依が見つけた先にはそれらしい建物があった。

「行ってみよっか」

美咲も同意し、2人はその先にある建物へと向かった。

ツアーを終え、再び乗り場へと戻ったゴンドラ。

案内人の説明が終了し、隼人と香奈はゴンドラから降り乗り場を後にする。

「ねえ、次あっち行ってみよ♪」

「へいへい・・・」

香奈は上機嫌に隼人を引っぱり、美咲達が向かった建物へと歩いて行く。

この建物は、いわゆるお土産屋さんや、食事が出来る場所だった。

先に中に入った美咲達。

「うわ〜♪ここお土産が売ってるんだ〜。ねえ、ちょっと見て行こう」

数々のグッズに目を輝かす美咲。

彼女は可愛い物も勿論好きだが、それよりも好きな物があった。

「お?アレを探すのね。よし、見に行きますか!」

芽依も同意し、お土産売り場へと向かった。

向かったと同時に、隼人達も建物に入る。

香奈は隼人に笑顔で話しかけた。

「お腹空いたね〜。ねえ、そろそろお昼時だし、何か食べよう♪」

「だな。俺も腹へってたんだよ」

2人はフードコーナーへと向かった。

一方、お土産コーナーにて「アレ」を探す美咲と芽依。

その「アレ」とは・・・

「あったあった♪」

お土産では定番の、その場所の風景や絵柄の「ポストカード」である。

美咲は特に、ヴェネツィアの美しい光景が描かれたポストカードに目を輝かせていた。

彼女は旅行等に行くと、必ずその地のお土産として、ポストカードを欠かさず買うのだ。

「いいな〜。やっぱり奇麗だよねえ、水の都」

「でも、ここじゃないけどね」

と、突っ込みを入れる芽依。確かに、ここはあくまでモデルにしただけのテーマパークである。

「せっかくここに来たんだからここのポストカードの方が良いんじゃない?」

「もう・・わかってるわよ。ちょっと憧れてみただけよ」

ちょっとツーンとした態度になる美咲。

一見、仲が悪そうに見えることもあるが、2人は大変仲が良い。

むしろ、仲が良いからこそ、こういうつき合い方が出来るのかもしれない。

「え〜っと・・・じゃあ、これとかどう?」

「お?いいわね。それ」

楽しそうにお土産コーナーで買い物をする2人だった。

食事をしにフードコーナーへと向かった隼人と香奈は・・・

「なんとか席が取れて良かったな・・・うわ・・・もうあんなに並んでる・・・」

2人だけだったため、うまい具合に席に着けた。気がつけば、長蛇の列になっていた。

フードコーナーと言っても、レストランのようなものだった。

ウェイトレスが注文を聞きにきた。

「いらっしゃいませ。ご注文はいかがなさいますか?」

メニューを見、何にするか話し合う。

「う・・・結構な値段だな・・・香奈、どれにする?」

「えっと・・・ぱ、パスタにしようかな・・・カルボナーラとかおいしそうだし」

隼人も同じく、

「お、俺はじゃあ、このボロネーゼとかいうのでいいや・・・」

ボロネーゼは、いわゆるミートソースのスパゲッティのような物である。

一番オーソドックスなパスタだ。

「かしこまりました。お飲物はいかがなさいますか?」

注文票に2人の注文を書いた後に飲み物の注文を受ける。

「えっと、コーヒーで」

隼人はコーヒーを注文した。続いて香奈は、「あ、私はホットのミルクティーで」

「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

「はい」

香奈がウェイトレスに確認する。

そして、ウェイトレスは書きとめ、厨房へと戻って行った

「ねえ、これが終わったら次どこに行こっか?」

香奈がパンフレットを手に話す。

「この『ゴンドリエールミュージアム』っていうのに行ってみたいんだけど・・・」

「あ、ああ。次はそこな」

少しぼ〜っとしていた隼人。

「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

心配をかけないように微笑んではみたが、先ほどから薄々感じていた。

自分でも何なのかはわからないが、何かが近づいている。

そんな予感がしていた。

それもそのはず。すぐ近くには、「CARDを持つ者」がいるのだから・・・

このすれ違いが、やがて大きな意味を持つことになろうとは、互いに知る由もなかった・・・















食事を終え、その後2時間近く園内を回り、隼人と香奈は十分に満喫し、すでに帰路に来ていた。

「は〜、楽しかった♪また行こうね♪」

子供のように無邪気な笑顔で踊るように歩く香奈を見ると、先ほどまで悩んでいたことが吹き飛んでしまいそうだった。そんなことを考える隼人だった。

「ああ、そうだな。今度は石田達も誘うか」

「うん♪真希ちゃんも誘って4人で行こうよ」

辺りは夕焼けに照らされ、オレンジ色の景色になっていた。

そんなときだった。突然、

「よう!熱いのぅ。お二人さん!」

先ほどのたこ焼き屋台の少年だった。

見た感じ、隼人達より若干年上のようだ。

右手にはたこ焼きを回す棒、左手には10個のたこ焼きがつめられたトレイを持っていた。

「そんなお二人には是非このたこ焼きを・・って、あら?」

少年の話を全て無視して通り過ぎて行こうとする隼人。

香奈はその態度に少々ためらいがあった。

「ねえ、いいの?なんか私たちに話してるみたいだけど・・・」

小声で隼人に言う。

「・・・」

香奈の言うことすらも無視する隼人。

「まあまあまあ、待ちぃや」

慌ててたこ焼きを持ったまま隼人の前に出る少年。

しつこさに呆れ、一度ため息をついた後に隼人は重い口を開く。

「何だよ。路上の押し売りはお断りだ」

「・・・まあ、そんなつれないこと言いなさんなや。『スペードのAさん』」







ふざけているかのような少年の顔は一変する。

隼人と少年の時間が、その時だけ止まったかのようになるのだった・・・