人の死って、こんなに簡単な物なのだろうか・・・
目の前で一人の少女が消えていった。俺のせいで・・・
殺したくなんてないのに・・・誰とも戦いたくなかったのに・・・
だけど、これはほんの始まりにしか過ぎないということを、まだ俺は知らなかった。
同じ一筋の光の先を目指す少女がまた一人、残酷な運命を辿ろうとしていることも・・・
第2話
「普通という幸福」
隼人達が通う学校。いつも通り、何ら変わること無く日々は過ぎていった。
あの出来事がまるで嘘のように。
少女の死は誰一人知ることはなかった。
それが「CARDを持つ者」であることの証であり、宿命だった。また、たった一人の少年が悩み苦しむことも・・・
「は〜やくん♪ 」
隼人の幼なじみ、香奈が呼びかける。
彼女は隼人とは別のクラスで、この間の出来事は知らなかった。
授業が終わると時々こうして隼人のクラスにくるのだ。
「ん?ああ。香奈か・・・」
その表情にいつもの明るさはなかった。
普段は彼女の前では明るく振る舞う彼も、今回ばかりは相当悩んでいるのだった。
それも当然である。
自分が最も避けたかったことをしてしまったのだから。
「何かあったの?はやくん」
そんな彼が心配になる香奈。
こんな表情を見せることは滅多にないのだ。
「・・・あ、いや。何もないよ。どうかした? 」
「ううん。特に用はないけど・・・」
明らかに様子がおかしいにもかかわらず、何事もないように振る舞う様子に香奈はますます気になるが。
彼の様子に気を使い、自分も気にしていないよう振る舞った。
「ねえねえ、今度の日曜日に一緒に遊びに行かない? 」
「どこへ? 」
突然の申し出に呆気にとられたが、とりあえず妥当な質問を返す。
「今度の日曜に新しくテーマパークができるの。なんだか面白そうだから、行ってみたくって♪」
嬉しそうに説明をする香奈。
そんな表情を見て、隼人は、
「(昨日のことが・・・嘘ならいいのに・・・)」
「駄目・・・・かな?」
おずおずと隼人に確かめる香奈。
その寂しげで悲しそうな彼女の様子を見て、
「ああ、いいよ。今度の日曜だな。オッケー!何時に・・・」
彼女に気を使い、心配させないようにいつも通りの態度をとる。
会話は自然と進んで行った。
昨日の出来事が夢であればいいのに・・・
しかし、隼人の記憶にだけ、しっかりと残っている。
断末魔の彼女の声を、忘れることは出来ない。
そんな悩みもまた、CARDを持つ者の宿命なのだろうか・・・
そんな悩みを持っているのは隼人だけではない。
同じような悩みを持つ少年少女は他にもいる。
この少女もまた、そんな中の一人だった・・・
「美咲〜!作品の制作、進んでる? 」
一人の女子生徒が呼ぶ。
美咲と呼ばれる、セミロングヘアーに左側を結い、クローバーをかたどった愛らしい髪留めをした少女。
「ううん。ぜ〜んぜん。どうしよっかな〜」
少女達は美術部に所属している。
季節は秋。
文化祭や運動会等の行事が行われるシーズンであり、彼女達にとっても忙しい時期なのである。
美術部も文化祭での作品展示があり、部員達はそれぞれ部内で決められたテーマを元に水彩画や油絵、色鉛筆等、あらゆる手段において作品を制作しなければならない。
「今回のテーマって結構難しいよね。『生と死』なんて、何を描いたら良いのかしら・・・」
美咲が言った。
そう。今回の美術部の作品テーマは「生と死」。
言葉を聞いただけでも深く難しいテーマではあるが、個性が光れば面白い作品が数多く生まれそうなテーマである。
「う〜ん・・・とりあえずみんなどんなの描いてるか聞いてみようよ」
「そうね。みんなどんなの描いてるんだろう・・・」
そんな会話を交わしながら2人は美術室へと向かう。
ごく普通の美術室。ここが彼女達の部室であり、ここで皆自分たちの作品を作る。
部室にたどり着いた2人。そこには数名の生徒が各自制作にかかっていた。
「お、みんなやってるね〜」
美咲はそんな光景に感心しつつ、室内で絵を描いている生徒に尋ねる。
「あ、部長。作品の締め切りっていつですか?」
メガネをかけたおとなしく優しそうな少年。彼が美術部の部長である。
「ああ、四葉さん。締め切りは今月末31日までだよ。まあできれば4、5日前には提出できるようにしておいてくれるとありがたいんだけど」
てきぱきと返答をもらう美咲。
「わかりました・・・・・・って、もう1週間とちょっとしかないよ!?」
「はあ・・・どうしよう・・・」
そんな美咲にもう一人の少女が尋ねる。
「全く描いてないの?」
首を縦に振る美咲。
つまり全く描いていないのだ。
「イメージは何となく浮かんでるんだけど・・・なんと言うかこう・・それを絵に出来ないっていうか・・・」
「行き詰まってるわけだ」
少女が苦笑する。
というよりも、半ば呆れているようだった。
「で、でも、なんとかするよ。あ、ほかのみんなはどんなの描いてるか見てみようよ」
「そだね。あ、三木島君が今ちょうど描いてるみたい」
三木島翔太。
同じ美術部の男子生徒である。
あまり普段から目立たなく、誰かと会話している様子もない。
どこかこう、ネクラな感じの印象も受ける。
「三木島く〜ん・・・どんなのか〜いて〜んの? 」
ひょいっと彼と彼のキャンパスの前に顔を出し、覗き込む。
「す、すごいね・・・」
あまりにも想像を絶する絵に驚いたのだった。
「どれどれ?うわ・・すごい・・・」
少女も覗き込む。
そして同じように驚いた。
ただ黙々と絵を描く三木島少年。
その瞳は集中しているという次元ではなく、まるでその絵に取り憑かれているかのように真剣な表情だった。
しばらく沈黙が続き、やっと彼が口を開く。
「・・・まさに『生と死』だと思うだろう? 」
彼のキャンパスには無惨にも無数の槍に串刺しにされ、息絶える少女とその槍の一つを持っている少年が不気味な笑みを浮かべながら立っているという壮絶な光景が描かれていた。
「この刺されてる少女・・・」
見ていて少し泣きそうになった。
それだけリアルであり、恐ろしさのにじみ出る絵だからだろう。
「もしかしたら・・・君って事になるかもしれないね・・・」
三木島翔太はボソっと呟き、道具を片付けはじめる。
「え?」
一瞬、彼が何を言っているのかわからなかった。
冗談なのか?
冗談にしては度が過ぎる発言に、少し恐怖する美咲。
「いや、もしかしたら逆の立場になるかもしれないけどね・・・」
道具をしまい、キャンパスもカバーを掛け、部室の定位置に置く。
そして彼は立ち上がり、
「気にしないで。いわゆるジョークってやつだから・・・」
「そ、そうよね。美咲、ジョークだって。そんなに気にしない気にしない」
少年の言葉に動揺する美咲にフォローを入れる少女。
「う、うん・・・」
まだどこか不安げではあるが、納得した。
いや、自分に無理矢理納得させる美咲。
「(私・・が?どうして?)」
気がつくと、三木島は教室を出て、いなくなっていた。
「美咲。美咲! 」
考え込んでいた美咲を少女が呼ぶ。
「あ、うん。大丈夫」
「変な奴よね・・・気にすることないって。美咲は優しいし、人に殺されるようなこともしてないんだから。大丈夫」
少女もまた彼女に対して優しく接していた。
「そうだよね。さ、私もがんばって描きますか」
立ち直り、絵を描くことにする美咲。
「その意気その意気」
2人は自分のキャンパスに絵を描き始める。
数時間後・・・
「じゃ、私はそろそろ帰るけど、美咲はどうする? 」
少女は一段落ついたため、帰ろうとしていた。
美咲にも一緒に帰ろうと呼びかけたが、
「私はもう少し描いてから帰るから、先に帰ってて。芽依」
少女の名は芽依と言うらしい。
「オッケー。でもあんまり遅くまでしない方が良いよ。帰り道に変なのも出るみたいだし」
「うん。わかってる。あんまり遅くならないようにする」
苦笑しながら答えた。
すると、はっと何かを思い出したかのような顔をして芽依が、
「あ、そうだ。今度おもしろいテーマパークが出来るんだって。今度の日曜だから、行ってみない?」
暗い顔をする美咲への、彼女なりの精一杯の気遣いなのであろう。
「いいわね。行く行く!」
美咲が笑顔で答える。
「よろしい。じゃ、今度の日曜ね。ばいば〜い」
「おつかれさま〜」
2人は互いに手を振り、芽依は教室を後にした。
一人黙々と絵を描く美咲。結局の所、何となく湧いていたイメージをキャンパスに描き、作品制作に取りかかっていた。
『もしかしたら、君・・って事になるかもしれないね・・・』
ふいにまた先ほどの言葉が脳裏に浮かぶ。
「うううん」
首を横に振り、必至に頭から忘れようとするが、
『いや、もしかしたら逆の立場になるかもしれないけどね・・・』
三木島の言葉が、頭から離れない。
何か心当たりがあるのか??
いや・・・そんなはずは無い。
そんなことばかり考えてしまい、なかなか絵の制作が進んでいなかった。
夕方6時。
気づけば他の部員は誰もいなかった。
みんな帰ったようだ。
「(そういえば・・部長も『先に帰るから、鍵お願い』って言ってたっけ・・・)」
部長に戸締まりを頼まれたことすらすっかり忘れるほど集中していたのだろうか。
いや、考えていたのは先ほどの言葉ばかり・・・
「(なんか集中も出来なくなてきたし、そろそろ帰ろっかな・・・)」
美咲も道具を片付け、キャンパスをしまう。
美術室の電気を消し、戸締まりを確認する。
そして、鍵を閉め、美術室を出た。
鍵は職員室の特定の鍵入れにかけておくのが決まりで、最後に出た生徒は責任を持って返さなければならない。
職員室はまだ6時だったため、数名の職員が残っていて、電気も当然ついているため、変わりはなかった。
なんら問題なく鍵を定位置に戻し、職員室を後のし、美咲は帰宅する。
美咲の自宅は、学校から15分ほど歩いたあと、電車に乗って30分ほどかかる。
電車から降りた後も15分ほど歩くので、実質帰宅までは1時間近くはかかるのである。
夕方と言えど、冬に近づけば、辺りが暗くなるのは早い。
暗い夜道を歩きながら、無事美咲は自宅に戻った。
彼女は父と2人だけで暮らしている。母親は美咲が幼い頃に他界している。
美咲の父である四葉雄大が男手一つで彼女を育てて来たのである。
「ただいま〜」
美咲が玄関で言う。
そこへエプロン姿の雄大が奥から出て来た。
「お〜い。遅いぞ〜美咲」
渋く低いトーンだが、どこか抜けた感じの声。
むさ苦しいほどの筋肉質で、ひげはボーボオー。
しかしどこか優しい感じの顔。
それが彼女の父、雄大であり、美咲にとっても最愛の父である。
「遅いって・・・まだ7時よ?それに、今日は部活でちょっと遅くなるって言ったはずなんだけど・・・」
苦笑する美咲に対し、雄大は、
「あれ?そうだったか?と、とにかく。飯にするぞ。飯」
「はいはい・・・」
これはいつも通りの会話なので、美咲もいつも通りの反応で返すのだった。
制服から私服に着替え、食卓へ向かう。
「今日はお前の好きなオムライスだ。パパが腕によりをかけて作ったぞ!」
鼻息をたてながら自慢げに話す雄大。
「おお・・おいしそう・・・」
素直にリアクションする美咲。
普通に見た感じおいしそうと言う、彼の作るオムライスが美咲は好きなのだ。
「いっただっきま〜す♪ 」
嬉しそうな表情。先ほどの悩みが一瞬のうちに吹き飛んだようだった。
幸せそうに頬張るその姿は大変癒されるものがある。
雄大と楽しく会話しつつ、夕食を食べ終える。
「ごちそうさま〜」
手を合わせ、美咲は食事を終えた。
自分の食べ終えた後の食器を流し台に持って行き、2階にある自分の部屋に戻る。
宿題をしたり、本を読んだり、音楽を聴いたりと、ごく普通の少女がするような日常生活を過ごし、10時になった。
「さて・・そろそろ寝ようかな・・・」
美咲は就寝しようとした。
その時、
「!?」
何かが脳裏を一瞬だけ過った。
何かが近づいてくる。そんな何となく程度の予感がした。
「(何?今の・・・)」
外は雲一つなく澄み切った夜空が広がっていた。
そんな夜空の下、窓から辺りを見渡す。
しかし、何も変わった様子はなかった。
「(何かが・・誰かが・・・呼んでる? )」
何となくではあるがそう感じた。美咲は部屋を出て、真っ先に階段を下りる。
「ちょっとコンビニ行ってくる」
美咲は靴を履き、玄関を飛び出して行った。
「おい!?美咲・・・・・・」
雄大はどこか悟っている様子にも見えた。
まるで、我が娘が出て行くことがはじめからわかっていたかのように。
美咲はそのかすかに感じる何かをたよりに、本能のまま走る。
一体、誰が何の為に呼んでいるのか。今はそんなことも考えることは出来なかった。
やがて、近所の公園にたどり着く。
人気のない静かな真夜中の公園は、不気味である。
「(・・・誰?)」
美咲は警戒しつつも公園に入って行く。
「へえ・・・『CARD』を持っている者同士は覚醒してなくてもかすかに感じることが出来るんだ・・・」
そこにいたのはなんと、同じ美術部の三木島だった。
「私を呼んでいたのはあなた? 」
美咲が真っ先に尋ねた。
「いや、呼んだというより、運命が僕たちを引き寄せたって言うのが正しいかな?」
何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「どういう意味?ただの嫌がらせ・・にしては手が込んでるよね? 」
身構える美咲。
勿論誰かと喧嘩等したことが有るはずも無く、ただみてくれだけそれっぽく構えているに過ぎない。
「だから・・君も僕たちと同じ『CARDを持つ者』ってこと。『CARDを持つ者』は互いに近くにいれば、それを本能的に察知するんだ」
淡々と答える三木島。
「『CARDを持つ者』・・・? 」
美咲が問い返す。
三木島が不気味に笑う。
「まだ君は覚醒してないんだろうけど、僕には関係ない。君の『CARD』、もらうよ・・・」
そういうと、突然高く飛び上がる。人間離れした脚力であり得ないほど高かった。
そして、彼の手には忍者の持っているクナイのような物があった。
それもまた、「CARDの力」によって現れた武器の一つである。
美咲に襲いかかる三木島。
「きゃあ! 」
叫びながらもなんとかそれを避ける。
三木島の攻撃はかわされ、地面に着地。
すかさず次の攻撃へ向かい、美咲に容赦なく武器を突きつける。
「ちょ、ちょっと。け、警察呼ぶわよ!? 」
普通に考えればそういう発想に至るのは当然である。
「呼べば?呼んだところで無駄さ」
なおも攻撃を続ける。
振り回されるクナイ。
ただ必至にそれを避ける美咲。
「何なの?なんであなたにこんなことされなきゃいけないの?」
質問を投げかける。
「言っただろう?君も僕も『CARD』を持っているだよ。」
攻撃の手はおさまらず。
「だから、戦わなくちゃ行けないんだ。おとなしく君も僕の為にーーー」
三木島は間を取り、宙に上がる。
そして、クナイを美咲めがけて、
「死んでくれ!! 」
と叫び、投げつけた。
迫り来た三木島のクナイ。
美咲は本能的にそれを避け、彼との間を空ける。
「何が『僕の為』よ? わけわかんないよ!」
美咲は絶叫する。
理解できない彼の言葉――彼自身に対して。
鋭く、睨みつけた。
「『CARD』は、全てを集めるとどんな願いでも叶えられるんだ。」
そう言った瞬、彼はひらいた間合いを詰め寄った。
驚きの声をあげる事すらなく、美咲は再び死の恐怖に埋もれる。
そんな彼女にむけてクナイがなおも襲いかかる。
それを本能だけで避ける美咲。
「すでに覚醒した奴はみんなそれぞれ自分の願いの為に戦いを始めている」
先ほどと同じく、淡々と三木島は言葉を紡いだ。しかし声を荒げ、嬉々とした表情で次の言葉は放たれた。
「僕もそうさ。自分の願いを叶える為に!!」
その事象を求める者の声。それはまさにその成就を夢見る少年の声だった。
――が、すぐにそれはもとの冷淡なものへと戻る。
「だから・・・僕の為に死ね!!」
その言葉の次の瞬間に放たれた強烈な一撃が彼女を吹き飛ばし、体制が崩れる。
地べたに転び、尻餅をついた美咲。
「(もう・・・駄目・・・・・・)」
「これで!! 」
三木島がとどめの一撃。
あきらめかけ、目を閉じた。
「(やだよ、こんなの・・・・・訳わかんないよ・・・・・・私はただ・・・・ただ・・・)」
「いやああああああああーーーーーーーーーーーー!?!?」
次の瞬間、眩いばかりの光が、まぶだの向こう側から感じられた。
光は強さを増し、体中から溢れ出た。
美しく、優しいその光は三木島も攻撃を止めてしまった。
「な、何?!まさか・・・」
そう。
美咲の「CARDの力」が覚醒したのだ。
美咲がそっと目を開けると、そこには、持ち手の細く短い剣が現れる。
レイピアと呼ばれる武器に似ているが、それとも少し異なる形状である。
「何?これ・・・」
その純白のレイピアが、美咲自身の武器だとわかるまで、数秒とかからなかった
「(これで・・・!! )」
美咲は手に持った武器で対抗することを決心する。
「うおおお!!」
三木島の表情には焦りの色がありながらも、クナイを美咲に向け、襲いかかる。
だが、彼女は手にした武器でその攻撃を受け止める。
「何?! 」
かなり動揺している。
「私は・・・今のこの幸せだけでいいの・・・・・・それを・・・こんな形で奪われてたまるもんですか!! 」
クナイごと三木島を押し返す。
その力は少女のものとは思えないほどだった。
大きく飛ばされ、公園にあった木に激突する。
「ぐあ!! 」
彼は強く打ったため、気絶した。
いつしか双方の持っていた武器は消え、そんな彼を遠くから見つめていた美咲は、
「これが・・私・・・私の力なの? 」
少し怯えていた。
自分の中にある強大な力に。
「私は・・そんな・・・」
その時だった。
「おい!そこの君たち。こんな時間に何をしてる! 」
偶然、夜のパトロールをしていた警察官が来た。
とっさの判断で美咲は、
「あ、ごめんなさい。コンビニに買い物に行ってて、たまたまこの公園を通りかかったら彼が倒れてたんです。気になったから様子を・・・」
自分でも少し無理がある良い訳だとは思ったのだが、
「そうか。あまり遅くまで出歩いてちゃ駄目だよ。近頃は物騒な事件も多いから」
割と簡単に納得してしまった。
「彼は僕がなんとかしておくから、君はもう家へ帰りなさい」
そういって彼女の背中を押し、帰るように言う警察官。
その意外な反応に戸惑いつつも、
「は、はい。ごめんなさい」
そういって美咲は公園を後にし、なんとか彼の攻撃から脱出することに成功した。
家にたどり着き、そ〜っと玄関から家に入ってくる。
「み〜さ〜き〜」
怒り爆発寸然の父、雄大がすぐ目の前で仁王立ちしていた。
「ご、ごめんなさい」
美咲はすぐに謝る。
そんな彼女を責めることは無く、雄大は、
「心配かけやがって・・・さ、早く上がれ。寒かっただろう。あったかいココアでも入れてやる」
「・・うん。あ、私が入れる」
美咲は台所へと向かい、親子2人のごく自然な光景が戻った。
彼女はこの後、先ほどの壮絶な出来事が忘れることは出来なかった。
自分の部屋に戻り、寝る支度を済ませ、ベッドに入っていた。
「(何だったんだろう・・・あれ・・・)」
先ほどの光景が浮かぶ。
自分の中から放たれた光。それとともに現れた武器。
そして、三木島の口から発せられた言葉の数々。
「(私の中にも・・・)」
「CARD」がある。
そう思いながら自分の胸にそっと手を置いてみる。
しかし、手を当てたところで、何もわかりはしなかった。
「(あの武器で私も戦わなきゃいけなくなるのかな・・・)」
不安だった。
誰かと戦うなんて事は出来ないししたくもなかった。
だが、今までも考えもしなかった。
いや、考えることするら出来ないような現実を突き詰められた今だからこそ、そんなことばかり考えてしまうのかもしれない。
「(なんで、私にこんな力が・・・・・今のままで十分なのにな・・・)」
一人の少女が思い悩みながら、夜が明けて行くのだった・・・
そして、今後彼女にも過酷な試練が待ち受けているということなど、知る由もなかった・・・