それは・・・

突然の出来事だった・・・

目の前で誰かが倒れていた。

それをただ見つめているだけの凍り付いたような瞳・・・・

そいつは・・・俺にも、いずれこんな時がくると言った・・・・・・・




「俺は・・・絶対に・・・誰とも・・・・・・・・。」



















第一話
「発端・覚醒」




















「おい一条。一条隼人! 」

青く澄み切った雲一つない快晴の日。呆然と学校の窓を見ていた隼人に担任の住山は呼びかける。

「何でしょうか? 」

 何の焦りもなく、ただ住山の顔の方を見て返事をする隼人。

「『何でしょうか?』じゃないだろう・・・話を聞いてなかったのか? 」

あきれ顔で再び聞き返す住山に隼人は・・・

「すみません。全然聞いてませんでした」

彼はいつもこうだ。どの授業も聞く時は上の空で、ろくに話は聞かず、教師の呼びかけにも全く動じない。
彼はいつもどこを見ているのか?
何を、どんなことを考えているのか?
それは誰一人理解できなかった。
しかし、彼は普段の成績もそこそこ優秀。
しかも、特に孤立しているわけでもなく、一般的に見ればごく普通の生徒だった。
ただ、大人をどこかなめているような態度が時々見受けられる。
そんなパターンは昼休みに入る前の授業まで続いた。

そして、昼食を取る時間。つまり昼休みに入った。
親友である石田をつれて屋上で昼食をとることが隼人の日課だった。
何事もなかったかのように、黙々と自分で作ってきた弁当を
鞄から取り出し、食べる隼人。石田は、

「なぁ、毎回思うんだけどさ、隼人」

「なんだよ」

石田の問いかけに面倒くさそうに聞き返す隼人。

「あの、先生に食って掛かるような態度。やめた方が良くないか?」

最もな意見だ。隼人が食って掛かるのは先ほどの住田だけではなく、ほとんどの教師に全く同じ態度をとっていた。

「別に。かまうもんか。めんどくさいし」

「おいおい・・・」

依然として態度を改めるつもりもない彼にあきれる石田。そこへ、一人の女の子が2人の所にやってきた。香奈だった。

「はやくん。一緒にお弁当食べよ」

彼女が来た途端に、隼人の態度が一変した。

「ああ、いいぜ。ここ座れよ」

そう言って隣を指差す。香奈はそれに従い隣に座ろうとするが、その瞬間。

「真希ちゃんも一緒にいい?」

そういって香奈の後ろからひょっこり現れたのは香奈の親友、姫野真希。

「やっほー!あたしもご一緒させてもらうよ」

彼女の明るいノリが正直言って嫌いというか、苦手な隼人は、

「べ〜つに〜。勝手にしろよ」

投げやりな態度に真希は、

「何よ〜。かなりんとずいぶん態度が違うじゃん!」

「そ、そんなことないだろ。別に駄目なんて言ってないんだから、さっさと座って食えよな!」

なぜか動揺する隼人をさらに真希は・・・

「はは〜ん・・・やっぱお姫様だもんね〜。かなりんは。こんな『なげやり無気力王子』にはもったいないよね〜」

「ま、真希ちゃ〜ん・・・私お姫様なんかじゃないよ。なんか恥ずかしい」

おどおどと真希に香奈は言う。「なげやり無気力王子」という言葉が引っかかった隼人は、

「誰が『なげやり無気力』だ!この『単細胞娘』!!」

と、立ち上がって真希にくってかかる。しかし、真希は俄然とした態度で言い返す。

「毎日先生に適当な態度とって怒られてるあんたにはぴったりな勲章だと思うけど?」

鼻で笑うような態度の真希に頭にきた隼人は、

「俺は別に間違ったことしてるつもりはないし、いつもうるさい先公達が悪いんだよ!それに、香奈は俺の・・・」

「俺の?」

急に静まり返っていく隼人の言葉に耳を傾けたのは真希だけではなく、石田もだった。

顔を真っ赤にする隼人。

気まずくなった気がした香奈は、
「み、みんな。お弁当早く食べようよ。お昼休み終わっちゃうよ」

香奈のその一言でその場の会話は終了したのだった・・・










何事もなく、いつも通りの一日が終わろうとしていた。

夕暮れの町。

今日もはやくんと2人で帰る。

はやくんの表情はどことなく暗く、何か思い悩んでいるようにとれた。

「はやくん・・・何か悩み事でもあるの?」

そっと歩きながら問いかける香奈に驚いた隼人。

「私でよかったら、悩み聞いてあげるよ!」

「あ、いや。何でもない・・・ありがとな・・・」

「そっか。」

そうは言うものの、やはり何か悩んでいる様子だった。

何を悩んでいるのか、わたしには分からない。

今は、はやくんが話してくれるまで待っていよう。









どうしても、昨夜のことが頭から離れない。

ただ学生同士の路地裏喧嘩を見ただけなら、こんなに思い悩むことはなかっただろう。

だが、昨夜は2つの衝撃的な出来事があった。


「人の死」と「CARDの存在」これらが自分にもいつか降り掛かる運命と宣告されたとなれば当然のことである。

「(くそっ・・・気にする必要なんてない・・・俺は・・誰とも戦うつもりはない・・・誰も死なせたくないんだよ・・・)」

と、心に誓う隼人だった・・・









翌朝。

いつも通りの平凡な朝だ。

一昨日の出来事が未だ忘れられずにいた隼人だが、日は確実にすぎていく。

一人暮らしをしている隼人は、朝食をとりながら、テレビをつけた。

ニュースを見る為だ。

特にこれといったニュースはない。

ふと隼人は思った。

一昨日、人が死んだのであれば、次の日にはニュースになってもおかしくはない。

ましてや、原因も不明に近いあのような状況であれば尚のこと。

しかし、昨晩のニュースでは何も言っていなかった。そして今日も・・・

「(おかしい・・・あれだけ不自然なニュースを取り上げない訳がない・・あのあと警察だって来たんだ・・・誰も知らないなんてことは・・・)」

そうこう考えているうちに、出かける時間になる。

「いっけね!時間だ!!」

急いでテレビを消し、準備をし、出かけた。






「『CARDを持つ者』・・・感じるわ・・・こんなに近く・・・まだ目覚めていないのね・・・なら・・・」

一人の少女が不気味に笑う。彼女の口からもまたあの言葉「CARDを持つ者」が・・・

いつも通りの調子で学校に着き、席に着く。

授業が何事も無く進み、休み時間・・・

クラスメイトの余りなじみのない少女が隼人に声をかけてきた。

「ねぇ、今日の放課後、暇?」

誰もがその会話を「告白」などの恋愛沙汰だと思っていた。

数名を除いて・・・

「え?まあ暇じゃないって言うと嘘になるな・・・」

当然あまり面識もない子にそんな誘いをされても考えるのはあたりまえである。

一方、時折その少女は恐ろしい瞳に変わる。いかにも何かを企んでいるかのような目だ。

「どうしても来てほしいの。あなたに・・・」

迷ったあげく、隼人は、

「・・・ああ。わかったよ。で、どこに行けば良いんだ?」

「(ふふ・・・)」

まるで「かかったな」と言わんばかりの不適な笑みを一瞬浮かべた少女だが、

「ありがとう。じゃあ、旧校舎の門のところに来て」

この学校には現在生徒が通う「新校舎」と以前使われていた「旧校舎」が並んでたてられている。

旧校舎は全く使われておらず、いくつもの怪談話や不吉な話があり、妙な噂も出回っているほどの場所である。

そんなところに呼び出してどうするのであろうか?

「・・・わかった。」

隼人は渋々了解するのだった・・・





放課後・・・

服を着替え、旧校舎へとやって来た隼人。

門の前には呼び出した張本人はおろか、人一人いなかった。

「・・・何だよ。誰もいないじゃないか」

無駄な時間を食ったと思い、引き返そうとしたが、そこへ彼女はやって来た。

「ごめんね・・・遅くなって・・」

先ほどとはだいぶ雰囲気が違っていた。

底知れぬ憎悪に満ちたその表情は、誰もが引くだろう。

無論、隼人もそれに気づいていないわけではなかった。

しかし、ここ数日の不思議な出来事と何か関係があるのではないかという考えがあったため、普通に接した。

「いや、別に。一体何の用だ?俺と話したことないよな。愛の告白ってわけじゃないんだろう?」

「・・・あら。バレてたの」

不適な笑みを浮かべ、彼女は答える。

「そうよ。確かに告白するために呼んだんじゃないわ・・・」

「なら何の・・・」

そう聞こうとした瞬間、彼女の口から、
「『CARDを持つ者』・・・」

その言葉を聞いた隼人は驚く。

「・・・あんた・・・何か知ってるのか?!」

「それを知りたかったら私について来て」

隼人は「CARDを持つ者」について知りたい気持ちでいっぱいだったため、ためらわず彼女について行った。

そして2人は旧校舎に入って行く。

廊下は古びてはいるが、それなりにきれいな状態ではあった。

それほど古い建物ではないようだ。

どこへ向かっているのだろうか。黙々と進む2人。

「おい。どこまで行くんだ?」

そう問う隼人に向かって彼女は口を開く。

「体育館よ。そこで教えてあげるわ・・『CARDを持つ者』の宿命をね・・・」

何を言っているのか今ひとつ理解できないが、今2人は体育館へと向かっているようだ・・・

体育館入り口にたどり着いた。

古びたドアをギシギシと音を立てながら開ける彼女。

「着いたわ・・・」

そこは何の変哲もない体育館であった。

「さあ、いい加減話してもらおうか。知ってるんだろ?何なんだよ!『CARD』って。俺も持ってるって言われたけど・・・」

怒りと焦り、そして不安が隼人を動揺させている。

「あなたは、この間見たのでしょう?『CARDを持つ者同士の戦い』を」

この間とは、間違いなく「命」と名乗る少年と息絶えた少年を目撃したことを指している。そう確信した。

「だから、『CARD』って何なんだ?なんでアイツは殺されなければならなかったんだよ!!」

「『CARD』は、持つ者に特殊な力を与えるの。トランプと同じ53枚存在していると言われているわ」

ついに語り始める。

「すべての『CARD』を集めた者は一つだけ、もっとも叶えたい願いだけが叶えられるそうよ・・・」

少しずつ暗くなっていく少女。

「そして・・その願いを叶える為に『CARD』を奪い合い、戦い、殺しあう・・・まさに『死のゲーム』・・・」

「何?!」

「私もそう・・・『CARD』を持っているわ・・・そして・・あなたも・・・」

そういって隼人を指差す。

「俺も・・・?」

いずれ戦うということが何を指しているのか、うすうすわかってきた。

・・・だが、納得できない。

・・・・・・いや、納得したくなかった。

「俺は・・俺は誰も殺したりしない!誰とも戦うつもりもない!!」

体育館中に響く、隼人の叫び。

「まだ目覚めていないの。『CARD』に目覚めれば、あなたが戦うつもりはなくても戦わなければならなくなるわ。そう・・・運命からは逃れられない!!」

突然豹変した彼女が襲いかかって来た。

手には気がつけばナイフを持っている。

しかも、一般に知られる物とは形が違う。これもおそらく「CARD」の力によって出現したのものだろう・・・

「くっ!!」

うまく避ける隼人。だが、彼女の攻撃は容赦しない。

「あなたにはここで死んでもらうわ。そして『CARD』をいただく!!」

防戦一方の状況が続く。そして、

「はあ!!」

「うわ!!」

強烈な回し蹴りをくらい、吹き飛ばされた。

体育館の壁に叩き付けられる隼人。

「ぐっ・・・何なんだ!?あんたがそこまでして叶えたい願いって何なんだよ!!」

「・・・・・・・・・一つ教えてあげる」

攻撃が止む。そして、少女が再び語りだす。

「『CARDを持つ者』は、戦いに破れて死んだ者はその死を誰にも知られること無く消える」

「?」

「死んだとしても誰も気づいてくれない・・・誰も悲しんでくれない・・・その存在そのものが消されるから・・・」

衝撃の発言に驚く隼人。

「な・・・だ、だとしても、それが何の・・・」

「ただし・・『CARD』を持つ者はその散り行く者を忘れることはないの・・・」

「?!」

「討った痛み、悲しみ、悔やみ。全て抱えたまま生きなければならないの・・・」

少しずつ彼女が何を言いたいのか感づき始めた。

「リョー君の死も・・受け止めなければならないの・・・」

「リョー君?・・・まさか!?」

不意にこの間目の前で死んだ少年が浮かんだ。

「そう・・・この間戦いに敗れて死んだ・・いや、殺された彼のことよ」

「・・・そうか・・・アイツはあんたの・・・」

「・・・彼と私は同じ『CARDを持つ者同士』。いずれは戦わなければならなかった。だから・・」

その瞬間・・・

「先に対抗勢力をつぶして行き、最後に残った2人のうちどちらかが願いによってよみがえらせるというシナリオになるはずだった・・・か?」

どこからいつ現れたのか、そこには「命」と名乗る少年の姿があった。

「アイツは・・・?!」

「あなた・・・どこからわいて出たの?」

「ふ・・・『CARD』が俺を戦場に誘っている・・とでも言っておこうか・・・」

微笑する命。

「おい!何なんだ!?お前は」

その何事もないような態度に怒りをあらわにする隼人。

「・・・言ったはずだ・・・いずれお前も戦わなければならなくなると」

「あんたも・・・」

命を指差す。

「あんたも・・・」

続いて少女を指差す。

「一体なんでそんなことで人と戦うとか、殺すとか平気でするんだ!!」

隼人の叫びが体育館中に響き渡る。

「・・・リョー君を・・・生き返らせるためよ・・・」

「?!」

その言葉を聞いて愕然となる。

「『CARD』を一刻も早く全て手に入れ、願いを叶える・・・愛しい人を生き返らせるの」

「そのためなら他の誰が死んでもいいのかよ!!」

反論するが、返って来た返事は冷たいものだった・・・

「ええ、勿論よ」

「何?!」

「他の誰が散って行こうが関係ないわ。リョー君がそばにいれば・・それでいいの・・・」

もはや目が普通ではなかった。何かに取り付かれたかのようなその瞳にはもはや何も映ってはいなかった・・・

そんな彼女を一瞬にして変えた。この少年が・・・

「・・・あいつを殺したのは俺だ」






ピキッ・・・

命が言った。その言葉を聞いた少女は・・・

「な・・んです・・って?」

聞き返す少女。

「三島良太。あいつの『CARD』は『ハートの3』だったな・・・おかげで少し俺の能力が強化された」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うあああぁぁぁぁぁ!!!

少女は鬼神となった。

その目はもはや少女の物ではなかった。

ナイフを振りかざし、命に襲いかかる。

だが、ひらりと難なくそれをかわす。

すぐさま方向を変え、再び襲いかかる。

それがしばらく続く。


「よくも!!!・・よくもリョー君を!!!!!!」

その驚くべき光景に、言葉を失う隼人。

目の前で起きていることは現実なのだ。

一人の少女がナイフを片手に一人の少年を殺そうとしていた。

人一倍戦うことを許せない隼人は・・・

「やめろ!!」

だが、その声は届かなかった。

いや、届くはずもなかった・・・

自分の置かれている立場がわかっていないのか、余裕の表情ですべてをかわし続ける命。

まるで踊るように・・・

「どうした?その程度か?もっと『CARD』の力を解き放て」

明らかな挑発である。だが、怒り狂った彼女にはそんなものは聞こえてはいない。

「うああああ!!」

突然何かが起こった。館内にある運動道具が地面にめり込む。

そして、隼人と命も地面に強い重力を感じる。

「な、何だ?!」

「ほう・・・これがおまえの『CARD』の力か・・・」

『重力』・・・それが彼女に秘められた能力であった。

「CARD」は武器を生み出すだけではなく、個人に特殊な力を与えるのだ。彼女の能力がそれだ。

「ぐ・・・」

地面に叩き付けられる隼人。命はなおも彼女の攻撃を避け続ける。

「そろそろいくか・・・」

そういうと、命は右手を上にかざし、その手にはあの銃が現れる。

銃口は彼女に向けられた。

襲い来る少女に向け、銃弾が放たれた。

「!?」

少女は反射神経を駆使し、すぐさま避ける。

人並みはずれた動体視力と反射神経。これも「CARD」の力なのか・・・

「く・・・」

「ほう・・・避けれるのか・・・ならこれならどうだ?」

命の銃から次々と銃弾が打ち出される。

それを避ける少女。2人の攻防戦が始まった。

それをただ見ているしかなかった隼人。

少女の重力はいつしか解け、そこに立ち尽くしているしかなかった・・・

「何だよ・・これ・・・」

隼人がささやく。

だが、それをよそに2人は戦う。

「やめろ・・・やめろ・・・・・・」












<俺は・・・・・・・・・・・・・・・・・>




”人が死ぬ?そんなの簡単だろう?”

<ゃ・・・めろ・・・・・・・俺はもう・・・・・・・・・・誰の死も見たくないんだ!!>




”本当にそうか?”

<あたりまえだ!?俺は・・・・誰の死も見たくない!!誰も傷つけたくないんだ!!>




”だが本能はそうは思っちゃいないぜ?”

<・・・・・あ・・・・・・・・・・・やめろやめろやめろやめろやめろやめろぉー!!!!>










心に潜む闇。

迷い・・・悩む隼人の心を蝕む。

こみ上げる思い。その時、彼の中で何かが燃え盛る。










やめろぉーーー!!!

隼人の周りを紅蓮の炎が包む。

炎上する館内。

その光景はまるで灼熱の嵐のごとくすべてを焼き払うかのようだ。



「な、何? 」

「これは?! 」

命と少女が驚く。

その炎の中に立つ隼人。彼の目はどこかうつろで、意識がないかのようだ。

「何が・・一体何が・・・」

動揺する少女。その動揺と焦りが彼女を駆り立てる。

先手必勝と考えた少女は、自ら隼人に向かい、襲いかかる。

その瞬間、強烈な光が放たれる。そして・・・

「きゃーーー!! 」

少女は吹き飛ばされる。その威圧感は凄まじい物で、まるで別人のような隼人。

「・・・」

ただその状況を傍観していた命が言った。

「これが奴の力か・・・」

吹き飛ばされた少女は、

「何だ・・・この力は・・・」

内に秘めたる「CARD」の力が目覚め、その力を解放したのだった。

すぐに周りの炎は消え、そこには、右手に剣を持った隼人が立っていた。

「まずはお前を!! 」

少女はまたも隼人に襲いかかる。自分の武器を振りかざし、切り掛かる。

悲劇は、次の瞬間起こった・・・

「・・・」

「な、何?!うわーーーー!! 」

信じられないスピードで、隼人は手にした剣を振り、少女を斬る。

その衝撃で宙を舞い、吹き飛ぶ少女。











「・・・ぁ・・・は!俺は・・・一体・・・・・・」

隼人が正気に戻る。取り返しのつかないことをしてしまった後に・・・

「面白い・・・」

命は不気味な笑みを浮かべる。

右手に持っている物に気づく。

「これは・・・」

「それがお前の『CARDの力』だ」

命が隼人の疑問に答えた。

「俺の・・・力・・・あ、あの子は!?」

何も言わずに命は少女の方を見る。

その悲惨な光景に目がいった瞬間、隼人は・・・

「あ・・・あぁ・・・・・・」

倒れていた少女の方へ駆け寄りる。

「おい!!しっかりしろ!!!! 」

少女は既に瀕死の状態だった。それでも彼女は何かを話し始める。

「それが・・・・あなたの・・・・力・・・なのね・・・・。後悔しないで・・・・わた・・し・・が・・弱かった・・・だけ・・・だから・・・」

「ごめん・・・・・・俺・・・俺ぇ・・・・・・」


隼人は泣いていた。

悔しかった。

心に抗うこと無く、彼女と戦ってしまったのだから・・・


「これから・・・も・・・・戦う・・・ことに・・なるわ・・・。きっと・・今より・・つらいことが・・・でも・・・戦い・・・つづ・・け・・・ることが・・・運命・・・だから・・・」

次の瞬間、彼女の胸の辺りが光り、中から一枚のタロットカードのような物が現れた。

「それ・・が・・・『CARD』・・・よ・・・」

そう言い残し、彼女は息を引き取った。

「おい!おい!! 」

呼びかけても反応はない・・・

そして、彼女の体は光りだし、消えて行く。

「ちくしょう・・・なんで・・なんでこんな・・・」








動き出したのは隼人の運命だけではなかった。

彼らと同じく「CARDを持つ者」もその何人かは隼人の覚醒に何かを感じていた・・・

「あ・・また一人覚醒した・・・」

「・・・おもろいことになりそうやなぁ」

「ふふ・・・」









「言っただろう・・・お前もいずれ戦うことになる・・・と」

命が冷たく言った。

その言葉に怒り、睨みつける隼人。

「お前・・・」

やり場のない怒り。

「今日はここまでにしておこう・・・」

「待てよ!俺はまだ聞きたいことが・・・」

呼び止めようとしたが、一瞬にして、命の姿は消えた。



深夜の体育館内には、外の大雨の降る音が聞こえていた。



隼人は一人たたずんでいた・・・





「俺は・・・・・・・ちくしょおおおおおぉぉぉ・・・・・・・!!! 」





・・・・・・雨はなおも降り続き、館内には隼人の叫びだけが響いていた。